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作られた文章

潰すか?

なぜ歌は宇宙へ飛んで行くのか

 2016年2月14日、日曜日の昼下がり、退屈な僕は宇宙へ行くことにした。と言っても行き方が分からないのでパソコンでカタカタと調べてみると最近はスペースシャトルに乗って水素の爆風にのって大気圏をこえるのがトレンドらしい。耳糞ほどのお金しかない僕にはとても資金も知識も集められないので、何かお手軽な方法がないかと友人に尋ねて歩いたところ、1人の友人が行き方を知ってるよーとの事だったので(家も近いし)話を聞きに行った。まずなくてはならないのは六分儀だ、と彼は言う。乗船学校に通っていた彼は、海の上で自分の船の位置を知るのに六分儀の使い方を嫌ってほど教わったが、結局最近はGPSやらで実際に使うことはなかった、という話をしてくれた。でも宇宙へ行くのと関係ないのでは?「宇宙に行くにはまず星のことを知らないといけない。君は星のことを知っているか」「冬の大三角くらい知っている。オリオン座のベテルギウスこいぬ座αプロキオン、そしておおいぬ座シリウスを結んだやつ」「それは宇宙に行くのとは関係ない。でも北極星ならどう?」「勿論、授業で習ったしね」晴れた空に見えない星を指差した。次に必要なのはギターだ。押し入れから古びたアコギを引っ張りだした。Fコードが弾けなくてお別れをしてから2年ほどになる。今ならもしかしてと、思い出すようにBeatlesのLet it beを弾いてみようとしたけどやっぱり無理だった。しばらくは弦と戦った。それから薬局をぐるぐる巡り、小さなカプセル錠をいくつか買って、昼飯を食べた。「宇宙」を模した定食屋はいつもどおりの豚肉で、油に塗れたテーブルの上であっという間に食べ終えた。春が匂わす強い風が吹いた。「こんな気分」を一緒に吹き飛ばしてくれないだろうかと願ってみたが、捨てられた広告紙がペシャと音を立てただけだった。喫茶でコーヒーとタバコを喫していると、隣の人が火星に行った話を友人に語る。デヴィット・ボウイは死んだのだ、ワイドショウが殺したのだ。モーリス・ホワイトも死んだ。それも覚醒剤が隠した。追悼だ、と言ってバーのマスターがスクリーンにアース・ウインド&ファイアーを流す。セプテンバーを聴きながら僕たちは踊った。